切手に見る世界の言葉(その3)
西アジア・北アフリカ・中央アジア編
|
イスラエル |
ここにあげた地域のほとんどは、イスラム教徒が人口の大半を占めている。アジアからアフリカにかけての大陸にまたがる地域となっているが、私は、「アジア」という言葉には、「ユーラシア大陸からヨーロッパ半島を除いた部分」という意味しかないと考えているので、このように大陸を越えて一つの地域としてまとめてみた。この地域で、イスラム教徒が多数派でない国は、主にヨーロッパからの移民を集め、死語となっていたヘブライ語とその文字を復活させたイスラエルとヨーロッパより古いキリスト教国で独特のアムハラ文字を用いるエチオピアだけである。アムハラ文字は、近隣のエリトリア、ジブチ、ソマリアといった国々でも一部用いられている。
大半がイスラム教国であるから、文字もアラビア文字が圧倒的に多い。旧ソ連から分かれた国々もアラビア文字を用いていたが、ロシアと同じキリル文字の時代を経て、一部ではローマ字への移行も始まっている。右から左に横書きするアラビア文字には、書道にあたるものが存在する。また、速記文字なみに速く書くこともできる。
アラビア語を話す地域は、今ではイラクから西は遠く大西洋岸のモーリタニアまで広がっているが、発祥地はアラビア半島である。その北にはメソポタミア文明、西にはエジプト文明という古い文明の栄えた土地がひろがっていた。チュニジアは古代ローマと覇を競ったカルタゴのあったところであり、敗戦後はローマとの間で文化の融合を進めた。古代ギリシャ・ローマ文明はアルプスの北よりも地中海をはさんだ北アフリカと密接な関係にあったのである。こういった地域が、イスラム教の受容とともにアラビア語を話すにいたった。イスラエルの存在は、この広大な地域を二分するくさびのようなものであり、アラブ世界の拒絶にあってきたことは周知のとおりである。
イスラム教は、主としてスンニー派とシーア派に分かれる。シーア派を国教としているイランの公用語は、印欧語族に属するペルシャ語であり。国名のイランも「アーリアン」と同源である。両派は、ムハンマド(マホメット)の後継者問題をめぐって分かれたが、民族の違いもこれにからんでいる。イランに隣接するアフガニスタンの公用語であるダリー語、旧ソ連から分かれたタジキスタンの公用語であるタジク語もイランのペルシャ語に近い言語である。イラン、イラク、トルコ、シリア、アルメニアにまたがって分布するクルド人の話す諸言語も印欧語族に属する。クルド人に対する各国の対応は苛酷で、とくにトルコは、2002年までその存在自体すら公には認めていなかった。
印欧語族の言語が優勢な国々 |
|
|
|
イラン |
アフガニスタン |
タジキスタン |
旧ソ連から分かれた国々は、タジキスタン以外は、すべてトルコ語も属するテュルク語族に属する言語が主として話される国々である。第一次大戦後に成立したトルコ共和国では、新たに人工言語としてのトルコ語が創出され、国家の力で普及が図られ、文字もアラビア文字からローマ字にかえられた。テュルク語族の言語で今もアラビア文字を用いているのは、アラビア半島から遠い中国のウイグル語である。
北アフリカ地域もアラビア語が優勢であるが、セム語族とは系統を異にするベルベル諸語の話し手も多く、特にモロッコでは人口の半数を超えている。イスラム教は今も拡大を続け、サハラ以南のブラック・アフリカ諸国にも、イスラム教が優勢な国は少なくない。
テュルク語族の言語が優勢な国々 |
|
|
|
トルコ |
アゼルバイジャン |
ウズベキスタン |
|
|
|
キルギス
(キルギスタン) |
カザクスタン
(カザフスタン) |
トルクメニスタン |
アラビア語が優勢な国々 |
|
|
|
サウジアラビア |
クウェート |
バーレーン |
|
|
|
オマーン |
イェメン |
エジプト |
|
|
|
シリア |
イラク |
モロッコ |
|
|
|
モーリタニア |
スーダン |
アルジェリア |
|
|
|
カタール |
レバノン |
チュニジア |
|
|
|
リビア |
ヨルダン |
アラブ首長国連邦 |
|