「千円からお預かりします」
をめぐって

山口輝久さん こんばんは。件名(注:RE:千円からお預かりします)のページ、拝見しました。敬語から、韓国のバスの運転手さんの話まで、面白く読ませてもらいました。
 私、ある地方銀行に勤めてます。もっとも現在は出向の身です。そんな関係で「千円からお預かりします」について、これは、一種の業界用語であるが、その狙いは「現金の取り扱い間違い」の防止にあるのだと、独り合点してました。言葉に出して言うことで目で見た事実をより確実にする効果がありますから。また、声にすることで、相手(顧客)のかたに「あっ、間違いなく受け取ってくれてるな」といった安心感を与える意味もあるのかなとも感じてました。
 しかし、世間一般として考えると、信太さんのような解釈が普通なのかも知れませんねェ。業界用語は、一般の方々に誤解を与えない工夫が大切なことを再認識した次第です。

RE 「なるほど!」と思いました。でも、「なるほど」というのは、そういう意図あるいは経緯でだったのか、ということであり、私自身としてはこういう言い方が好ましくないという考えに変わりはありません。どこにも業界用語というものはあるもので、教師の世界には、顧客にえらそうにできる(orできた?)のは他に医者ぐらいのものですから、業界用語がたくさんあります。相手がどう思うかという配慮がまるでないからでしょう。たとえば「留年」のことを「原級留置」といいますが、これは仲間うちだけで、そうなった生徒の親に対しては、「留年」と使い分けます。こんなとき言い間違えると警察につかまったような印象を親が受けてしまいます。私自身、「教務分掌」という言葉をうっかり使って、「それ、なんだ?」と言われたことがあります。「教師の誰が何をするかということだ」というと、「じゃあ、役割分担」でいいじゃないか」と言われました。授業や試験監督のときに列の合間を歩き回ることを「机間巡視(きかんじゅんし)」といいます。いかめしすぎますね。



伊深宣一さん 最近このページを知り、少しづつ面白く拝読させていただいています。この項目はいつ頃UPされたか分かりませんが、思うところあってメールする気になりました。

この言い方は、数年前小売業をしていた頃近所のコンビニで若いアルバイト店員から言われて、なんだそりゃ、これぞ不正な処理だと不快になったものでした。その時何故こんな言い方になるか考えてみたのですが、彼らの言いたい事は多分例えば(714円の買い物に対して端数14円を足さずに)千円(を出すのですか? そこ)から(お釣りを計算しろと言うことならその金額を)お預かりします、と言う事なのではと推測しました。「から」を挟むだけでそんなに長い、しかもちょいと憚られるようなニュアンスを伝えようとしていたのです(断定してしまいました)。文法上の無理もあるけれど、その余計なニュアンスが腹立たしさをなお幾分か増やしているようです。でも、であるならば、消費税が導入されて札+小銭という支払い方が一般化して後にこの言い方が発生した理由が分かる気もします。

「札を出されてレジも打っちまったのに、後から小銭出すなよ。レジの画面に出るつり銭と合わなくなって面倒なんだよ。小銭出すなら出すと最初から言えよ」という店員側の気持ちが「から」に現れています。客としては逆に「千円からどこまで?」と聞きたくなってしまうのですが・・・

RE  実は、今日近所のスーパーで買物をして「千円からでよろしいでしょうか?」と言われ、「これだ!」と思ってあの記事に「結論」なるものを書き加えました。伊深さんが御覧になったのが、その前なのかあとなのか気になります。

> 「札を出されてレジも打っちまったのに、後から小銭出すなよ。レジの画面に出るつり銭と合わなくなって面倒 なんだよ。小銭出すなら出すと最初から言えよ」 という店員側の気持ちが「から」に現れています。

という部分に思わず笑ってしまいました。何やら向こうの都合で言われるから腹が立ったのだろうと改めて思いました。

伊深宣一さん 実は私が拝読した時はまだ「結論」は書かれていませんでした。で、読んでみて。預かり金額の確認はそのとおりだと思いますが、それだけなら「千円お預かりします」で十分なわけで、「から」の問題は相変わらず残ってしまいます。

あと、そんなに語られているのかと検索をかけてみましたら、確かにこれでもかって程出てきますね。全部を読むのは大変そうだったので、一部分からの印象になりますが、多かったのは外食産業のマニュアルのせいだというのと、何とか文法的にか意味的にか正当化しようとするのと、単に誤用だとするものでした。

いずれも発生した原因というか理由を、何らかの説で説明しようとするもので、それが「誤用」であるのにもかかわらず蔓延した理由を説明出来ているものはあまり見かけませんでした。そのコトバや物言いが流行るには、何がしかの便利さあるいは新奇さとかの快感が使用者にあるはずです。その視点でみると

>何やら向こうの都合で言われるから腹が立ったのだろう

向こう=アルバイト店員あるいは客より自分の楽がいいという店員。
都合=しかもそれを一見丁寧っぽいコトバで表出できる便利さ。なお言うならどうやら実際丁寧な丁重な、不快感を与えない言葉遣いと多分信じてさえいるように見えるという事実。

こうなってくるとコトバという範囲を超えて、人と人の関係の問題って気もします。腹が立つというより、なんだかうっすらと寂しくなって、大昔の科白「近頃の若い者云々」が出てきそうになります。

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